2015年03月30日

ルワンダの祈り...

「外国人は殺せ!」


冒頭からショッキングな内容でした。著者・後藤健二さんが初めてルワンダ共和国に訪れた際に武装した多数の少年兵に囲まれたこと‥続けざまに酔った兵士に銃口を向けられ、お金を奪われてしまったことを回想するところから、本は始まります。

かつて同地で起こった痛ましいジェノサイド(大量虐殺)、そこで生き残った人たちに取材を試み、書きおこしたルポ「ルワンダの祈り」を読みました。




虐殺によって多くの男性が殺されてしまいました。したがって当時を知る女性たちに、自ずと耳を傾けることになります。その過程で著者が出逢ったのは、のちに政治家となった母親を持つ、ある4人の親子。慰霊祭に同行させてもらうなど、長期的なインタビューを行っています。

浮かび上がってくるのは、惨劇を目の当たりにした親子に対してデリケートな部分は触れてはなるまいと、慎重に言葉を選びながら、親身になって接する後藤さんの姿‥。その真摯な姿勢に母親も心をひらき、現地で行われてきた事実を包み隠さずに、ときに涙ながらに語ってくれています。


「使命」という言葉が相応しいでしょうか。現地へ赴いた理由(わけ)が、決して興味本位などではないことが手に取るように伝ってきます。大昔に日本人の間でもあった「悲劇」を、少しでも多くの人に知ってもらおうとする、後藤さんの“想い”がここにあります。

ジャーナリストが書いた本というと、独りよがりでどこか自分に酔ったような作品をイメージしがちですが、本書においては難解な語句もなく、小学生くらいの子供でも読める教科書かくやの、終始優しい文章で綴られています。

‥自らにもまだ小さなお子さんがいらしたと訊きますし、どんなに無念だったことでしょう。こうして後藤さんが命がけで伝えようとしてきた意思や信念といったものが、大勢の人たちの目にとまってくれるのを、ただ今は願ってやみません。


ブログランキング・にほんブログ村へ

ラベル:後藤健二
posted by はむ at 10:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 古書堂 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月16日

本当の恐怖?

今春放送の「世にも奇妙な物語」の概要が、フジTVより公表されました。


『世にも奇妙な物語 25周年スペシャル・春〜人気マンガ家競演編〜(仮)』


25周年という記念すべき回に、人気マンガとのコラボ‥ですか。

20周年のときも「人気番組の競演編」なんてのがあったけど、正直このコラボに関してはやめて頂きたかった。全国にいる奇妙ファンが望んでいるとでも、思ってるのかなぁ。制作側はどこか履きちがえているのではないでしょうか。人気のあるものを、とりあえず組み合わせておけば、間違いは起こらないだろうという。ファンはただ、純粋に奇妙なストーリーだけを欲しているのに...

「人気番組」の際は“番宣”も兼ねているような節も見えてしまって、心底辟易しました。長年番組を視聴してきたファンの怒りを買っていたのが、つい昨日のことのように思い出されます。‥あの“悪夢”がようやく払拭しかかってきたところで、今度は人気漫画家競演編ですものね。

ワンピースの他に、どんなマンガが名を連ねるのか、現時点では分かりませんけれど、不安感は尽きませんよ。以前にあった「SMAPの特別編」ですとか、あぁいった括りでしたらまったく問題なかったのですが。“悪夢、ふたたび”なんてことだけは、どうかなりませぬように m(__)m


ところで筆者も番組スタート時から欠かさず視てきた古参者。そんな三度の飯より“奇妙好き”の私が、もっとも恐怖を感じた「本」 って、なんだったと思います?

フィクション・ノンフィクション問わず、これまで数多くの書物に目を通してきましたが、迷わずにこう答えます。それは新潮45シリーズ...


殺人者はそこにいる―逃げ切れない狂気、非情の13事件


なにやら物騒なタイトルですね‥。同シリーズは現実に起こった、残酷でいて幾分奇妙な事件を多数取り扱っているのですが、とりわけ上記の本の中に掲載されている「自殺実況テープ」、これがハンパない怖さです。


ある男が自死にいたるまでの数日前からの出来事を、自らテープに吹きこんで「記録」しており、それを元にしてライターが書き起こしたもの。いったい男はなぜこのようなテープを遺したのか、不明な点も多いです。しかし、本当の恐怖は迫りくる死を前にして、際限のない危険すぎる男の“妄想”‥。自分が犯した行為をどこまでも「正当化」しようとしている様であったのかも知れません。

そして迎えた、決行の夜---

ここまでくると、もう読者は恐怖の底です。紙媒体であれほどでの恐怖感を抱いたのは、私自身初めてでした。活字の段階ですでに怖いのだから“現物”を耳にした人はもっとだったでしょう。実際、テープを聴いて鬱状態に陥ってしまった方もいたとかいないとか...


どうしてこんな話を唐突にしたかというと、世にも奇妙な物語バナシのついでではなくて、ちゃんと伏線があります。本当の理由は先日、小池真理子著の「怪談」を読んだから。この中にある【幸福の家】が自殺テープの件と、通ずるものがありました。およそ怪談らしくない“奇妙テイスト”で、個人的にはいちばん好きでしたけどね。ややもすると春の特別編で満足できない虞がある人のために、いわば恐怖の“おすそ分け”です(笑)

文学的に愉しむなら、もちろん小池さんの怪談。もし‥もしも、あなたがリアルな恐怖を体感したいのなら、逃げきれない狂気‥となりますでしょうか。心して読んでください!



ブログランキング・にほんブログ村へ

posted by はむ at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 古書堂 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月10日

恋愛書簡術?

突然ですが‥‥あなたはラブレターを書いたこと、ありますか?


一口に「ラブレター」といっても、様々な種類のものがありますよね。恋人同士が交わすのもそうだし、見ず知らずの相手からいきなり『好きです!』だなんて、手渡されてくるアレも、相手に自分の想いを伝えるラブ・レター。ロマンチック!いいなぁこういうのも...

かくしてフランスの作家、オノレ・ド・バルザックは読者からもたらされた一通の“ファンレター”によって、身も心も焦がしてしまう熱い恋の物語が幕を開けます。





中条省平さんがお描きになった「恋愛書簡術」、読みました。タイトルにもありますように本では「書簡」という言語を用いています。最近この言葉自体あまり聴かれなくなりましたが、要は“手紙”のことですね。

手紙にありったけの愛の文句をしたためる‥。取りあげられているのは世界的に名を馳せた文豪な方たちです。したがって語彙も豊かだし、表現の仕方も独特。多様な恋愛模様も窺い知ることができて、愉快でしたよ。

作家というのは奇人変人が多いとも云います。実際読んでみて、「恋愛書簡」として参考になるのかは‥‥各々の文豪にもよりそうだけれど(笑)。こうした手紙による男女ふたりのやり取りをの覗き見ようというのが、本書のコンセプトです。“覗き見る”とは、いささか聴こえがよくないでしょうか。でも、多くの秘密を抱えこんだ谷崎潤一郎氏の項では、この表し方がもっとも適切であるかとも。


同居する夫婦や恋人には手紙はいらない。書簡には距離が必要なのだ。いつもながらの書簡というコミュニケーション形式の逆説である ※【谷崎潤一郎と麗しの千萬子】より


こう説くのは著者の中条さん。なるほど、距離が必要‥。そういえばドラマ「人間・失格」に登場する大場誠も、転校で離ればなれになった元クラスメイトの女の子と文通をしながら、互いの近況や心情などを伝え合っていました。思い出しただけでも泣けてきそうです(笑)


個人的に印象に残ったのはヴィクトル・ユゴー。多くの女性と浮名を流してきた彼に宛てた、元・女優の最後の手紙。“正式な”妻ではなかった彼女が、いかなるときもユゴーに寄り添い続けた真の理由とは‥‥。もう、あの書簡に記されていたことが全てであったと感じます。

それにしましても、本書に出てくる乙女方はいずれも美しい!各文豪が本業に支障をきたすくらい?熱を上げていたのも、よーく判ります。あ、先ほど『男女ふたりのやり取り』と申しましたが、中にはちょっとワケあり的な?例外なカップルもおりますので、一応心の準備を(笑)


あぁ、なんだか自分も書いてみたくなりました。

親愛なる‥‥‥「?」 おやおや、私には肝心な書くお相手がいなかったようです。
恋人とまでいかなくても、ほとばしる愛の言霊をぶつけたくなるような人を、はやく見つけたいなぁ(笑)

ブログランキング・にほんブログ村へ

ラベル:恋愛書簡術
posted by はむ at 11:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 古書堂 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。